Built In Self Test (BIST)は、デジタル回路設計において、回路の自己診断機能を持つテスト手法である。BISTは、デバイスやシステムが自己検査を行うための内蔵機能を提供し、外部テスト機器に依存せずに、回路の機能や性能を確認することができる。この技術は、特にVLSI(Very Large Scale Integration)デバイスにおいて重要であり、製造過程や運用中における故障検出の効率を向上させる。
BISTの重要性は、テストの自動化と効率化にある。従来のテスト方法では、外部のテスト機器を使用して回路の機能を確認する必要があり、これには多くの時間とコストがかかる。BISTを導入することで、デバイスは自己診断を行い、テスト結果を即座に得ることができるため、全体的なテストコストを削減し、テストプロセスを迅速化することが可能となる。
BISTの技術的特徴には、自己生成テストパターン、自己評価機能、そして自己修正機能が含まれる。これにより、デバイスは自動的にテストを実行し、結果を評価することができる。BISTは、特に高信頼性が求められるアプリケーション、例えば航空宇宙、医療機器、自動車産業などで広く利用されている。
Built In Self Test (BIST)の主要なコンポーネントは、テスト生成器、テスト実行ユニット、評価ユニット、およびデータ出力ユニットである。これらのコンポーネントは、相互に連携して回路の自己診断を実現する。
テスト生成器は、特定のテストパターンを生成する役割を持つ。このテストパターンは、デジタル回路の動作を検証するために必要なデータであり、通常はランダムまたは特定のアルゴリズムに基づいて生成される。生成されたテストパターンは、テスト実行ユニットに送信され、回路に適用される。
テスト実行ユニットは、生成されたテストパターンをデジタル回路に適用し、回路の動作を実行する。このプロセスでは、回路の各部分が指定されたテストパターンに従って動作するかどうかを確認する。テスト実行ユニットは、回路の動作を監視し、結果を評価ユニットに送信する。
評価ユニットは、テスト実行ユニットから受け取った結果を分析し、テストが成功したかどうかを判断する。このユニットは、期待される出力と実際の出力を比較し、異常があった場合にはその情報を記録する。評価結果は、データ出力ユニットに送信され、最終的なテスト結果が報告される。
BISTの実装方法には、ハードウェアベースのBIST(HBIST)とソフトウェアベースのBIST(SBIST)がある。HBISTは、専用のハードウェアロジックを利用してテストを実行するのに対し、SBISTは、ソフトウェアを使用してテストを行う。これにより、BISTの適用範囲は広がり、さまざまなデジタル回路に対応することが可能となる。
テスト生成器は、BISTの中で最も重要なコンポーネントの一つであり、テストパターンを生成する役割を担っている。生成されるテストパターンは、通常、シフトレジスタやLFSR(Linear Feedback Shift Register)を用いて生成されることが多い。これにより、ランダムなテストパターンや特定のパターンを効率的に生成することができる。
テスト実行ユニットは、生成されたテストパターンをデジタル回路に適用し、回路の動作を確認する。これにより、回路が期待される動作を行っているかどうかを検証する。回路の各部分が適切に動作しているかを確認するために、複数のテストパターンを適用することが一般的である。
評価ユニットは、テスト実行ユニットからの出力を評価し、テストの成功・失敗を判断する。期待される出力と実際の出力を比較することで、回路の異常を特定する。このプロセスは、BISTの精度と信頼性を向上させるために非常に重要である。
Built In Self Test (BIST)は、他のテスト技術と比較していくつかの利点と欠点を持っている。例えば、BISTは、外部テスト機器を必要とせず、自己診断を行うことができるため、テストプロセスが迅速で効率的である。これに対して、従来のテスト方法は、外部機器に依存し、テストの準備や実行に時間がかかることが多い。
BISTと他のテスト技術、例えばDesign for Testability (DFT)やBoundary Scan(JTAG)との比較において、BISTは特に自己完結型のテスト機能を提供する点で優れている。DFTは、設計段階でテスト容易性を考慮する手法であり、テストの実行には外部テスト機器が必要である。一方、Boundary Scanは、JTAGインターフェースを利用して回路の状態を検査する方法であり、これも外部機器に依存する。
BISTの利点には、テストの自動化、コスト削減、テスト時間の短縮が含まれるが、欠点としては、回路に追加のハードウェアロジックが必要となるため、デバイスの面積や消費電力が増加する可能性がある。また、BISTの設計には専門的な知識が必要であり、実装が難しい場合がある。
実際の例として、BISTは自動車のECU(Electronic Control Unit)や、航空宇宙産業の高度な電子機器に広く使用されている。これらのアプリケーションでは、高い信頼性と安全性が求められるため、BISTの導入が非常に重要である。
Built In Self Test (BIST)は、デジタル回路が自己診断を行うための内蔵機能を提供し、テストプロセスの効率を向上させる重要な技術である。