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Contents:
  1. Built In Self Test (BIST)
    1. 1. 定義: Built In Self Test (BIST) とは何か?
    2. 2. コンポーネントと動作原理
      1. 2.1 テスト生成器
      2. 2.2 テスト実行ユニット
      3. 2.3 評価ユニット
    3. 3. 関連技術と比較
    4. 4. 参考文献
    5. 5. 一文要約

Built In Self Test (BIST)

1. 定義: Built In Self Test (BIST) とは何か?

Built In Self Test (BIST)は、デジタル回路設計において、回路の自己診断機能を持つテスト手法である。BISTは、デバイスやシステムが自己検査を行うための内蔵機能を提供し、外部テスト機器に依存せずに、回路の機能や性能を確認することができる。この技術は、特にVLSI(Very Large Scale Integration)デバイスにおいて重要であり、製造過程や運用中における故障検出の効率を向上させる。

BISTの重要性は、テストの自動化と効率化にある。従来のテスト方法では、外部のテスト機器を使用して回路の機能を確認する必要があり、これには多くの時間とコストがかかる。BISTを導入することで、デバイスは自己診断を行い、テスト結果を即座に得ることができるため、全体的なテストコストを削減し、テストプロセスを迅速化することが可能となる。

BISTの技術的特徴には、自己生成テストパターン、自己評価機能、そして自己修正機能が含まれる。これにより、デバイスは自動的にテストを実行し、結果を評価することができる。BISTは、特に高信頼性が求められるアプリケーション、例えば航空宇宙、医療機器、自動車産業などで広く利用されている。

2. コンポーネントと動作原理

Built In Self Test (BIST)の主要なコンポーネントは、テスト生成器、テスト実行ユニット、評価ユニット、およびデータ出力ユニットである。これらのコンポーネントは、相互に連携して回路の自己診断を実現する。

テスト生成器は、特定のテストパターンを生成する役割を持つ。このテストパターンは、デジタル回路の動作を検証するために必要なデータであり、通常はランダムまたは特定のアルゴリズムに基づいて生成される。生成されたテストパターンは、テスト実行ユニットに送信され、回路に適用される。

テスト実行ユニットは、生成されたテストパターンをデジタル回路に適用し、回路の動作を実行する。このプロセスでは、回路の各部分が指定されたテストパターンに従って動作するかどうかを確認する。テスト実行ユニットは、回路の動作を監視し、結果を評価ユニットに送信する。

評価ユニットは、テスト実行ユニットから受け取った結果を分析し、テストが成功したかどうかを判断する。このユニットは、期待される出力と実際の出力を比較し、異常があった場合にはその情報を記録する。評価結果は、データ出力ユニットに送信され、最終的なテスト結果が報告される。

BISTの実装方法には、ハードウェアベースのBIST(HBIST)とソフトウェアベースのBIST(SBIST)がある。HBISTは、専用のハードウェアロジックを利用してテストを実行するのに対し、SBISTは、ソフトウェアを使用してテストを行う。これにより、BISTの適用範囲は広がり、さまざまなデジタル回路に対応することが可能となる。

2.1 テスト生成器

テスト生成器は、BISTの中で最も重要なコンポーネントの一つであり、テストパターンを生成する役割を担っている。生成されるテストパターンは、通常、シフトレジスタやLFSR(Linear Feedback Shift Register)を用いて生成されることが多い。これにより、ランダムなテストパターンや特定のパターンを効率的に生成することができる。

2.2 テスト実行ユニット

テスト実行ユニットは、生成されたテストパターンをデジタル回路に適用し、回路の動作を確認する。これにより、回路が期待される動作を行っているかどうかを検証する。回路の各部分が適切に動作しているかを確認するために、複数のテストパターンを適用することが一般的である。

2.3 評価ユニット

評価ユニットは、テスト実行ユニットからの出力を評価し、テストの成功・失敗を判断する。期待される出力と実際の出力を比較することで、回路の異常を特定する。このプロセスは、BISTの精度と信頼性を向上させるために非常に重要である。

3. 関連技術と比較

Built In Self Test (BIST)は、他のテスト技術と比較していくつかの利点と欠点を持っている。例えば、BISTは、外部テスト機器を必要とせず、自己診断を行うことができるため、テストプロセスが迅速で効率的である。これに対して、従来のテスト方法は、外部機器に依存し、テストの準備や実行に時間がかかることが多い。

BISTと他のテスト技術、例えばDesign for Testability (DFT)やBoundary Scan(JTAG)との比較において、BISTは特に自己完結型のテスト機能を提供する点で優れている。DFTは、設計段階でテスト容易性を考慮する手法であり、テストの実行には外部テスト機器が必要である。一方、Boundary Scanは、JTAGインターフェースを利用して回路の状態を検査する方法であり、これも外部機器に依存する。

BISTの利点には、テストの自動化、コスト削減、テスト時間の短縮が含まれるが、欠点としては、回路に追加のハードウェアロジックが必要となるため、デバイスの面積や消費電力が増加する可能性がある。また、BISTの設計には専門的な知識が必要であり、実装が難しい場合がある。

実際の例として、BISTは自動車のECU(Electronic Control Unit)や、航空宇宙産業の高度な電子機器に広く使用されている。これらのアプリケーションでは、高い信頼性と安全性が求められるため、BISTの導入が非常に重要である。

4. 参考文献

  • IEEE (Institute of Electrical and Electronics Engineers)
  • ACM (Association for Computing Machinery)
  • International Test Conference (ITC)
  • Electronic Design Automation (EDA)関連企業

5. 一文要約

Built In Self Test (BIST)は、デジタル回路が自己診断を行うための内蔵機能を提供し、テストプロセスの効率を向上させる重要な技術である。